VDES(VHFデータ交換システム)は、世界中で30万隻以上の船舶が船舶追跡やその他の航行・安全関連目的で使用している、人気のAIS技術の第2世代です。図に示すように、AISは船舶が自船の位置(ID、針路、速度を含む)を送信できるようにします。この情報は、他の船舶、沿岸VHF無線ネットワーク、そして今日では衛星によっても受信されます。AIS 2.0 とも呼ばれます。
• 自動化とデジタル化
• コスト削減と簡素化
• 優れた安全性と保全性
• 優れた海洋状況把握
• e-Navigationサービスの実現
• ITU勧告(ITU-R M.2092)
• SOLAS条約第四、五章 (IMO要件)
• 低価格の船舶設備
• 衛星による世界規模のカバレッジ
• 非常にシンプルで堅牢
過去10年間、海運業界と関係当局はさらなるデジタル化の必要性を認識してきました。これは IMOのe-Navigation 構想に基づいています。
VDESは e-Navigation 構想を実現するための新しい通信ソリューションです。VDES は AIS の拡張であり、VHFを使った双方向のデータチャネルを使います。VDES専用に確保された衛星チャネル(上りと下り)を使用することで、VHFアンテナを備えた全ての船舶は世界規模で通信ができるようになります。左の図は、「氷海図」、「エンジン監視」、「スマートブイを使用した環境監視」など、VDESを使ってできる様々なサービスの一部を示しています。
VDESシステムは以下の2つのサブシステムで構成されています。
Sternula is working with partners interested in leveraging VDES technology to conduct a global demonstration project.
Through us, you can participate as a worldwide VDES demo partner. However, the specific scope and cost are undetermined, so even if you participate, the details of the contract will need to be adjusted.
VDES combines the current AIS, which is mandatory to be included in the IMO’s SOLAS Convention, with the new VDES (VHF Data Interchange System) standard. AIS is currently deployed on more than 200,000 vessels. VDES provides a new, secure, high-capacity data channel and global, two-way communication via satellite.
The satellite communication feature provided by Sternula is called VDE-SAT. VDES works with existing VHF antennas and new terminals (no new satellite antennas on board are required). VDES does not allow IP connectivity by design. This means that ECDIS (Nautical Chart System), ship engines, power systems, and other critical ship systems that could be targeted for cybercrime, espionage, and terrorism can be securely connected to services on the ground via VDES.
At a public workshop in Accra, Ghana, Lars Moltsen, Founder and CEO of Sternula, gave a presentation on VDES with the Ghana Maritime Authority and the seven maritime countries that participated online. In it, we use the name “AIS 2.0” as the name of VDES. (Similar to how the mobile communications industry recommends using designations such as 3G, 4G, and 5G rather than standard technology names.)
Lars Moltsen also highlighted some of the feasible use cases for VDES the short to medium term, calling for further cooperation and engagement towards the standardization of the technology .
AISは1990年代に開発され、海運業界のデジタル化の幕開けとなりました。図1は、AISによって船舶がID、現在位置、針路、速度を含むメッセージを他の船舶や沿岸局と共有できる仕組みを示しています。近年では、2010年頃からAIS衛星が配備され、世界中でAISを受信できるようになりました。
AISにより、船員は船上のECDIS(電子海図情報表示システム)で付近の船舶を自動的にプロットし、追跡することができます。これは非常に効果的な衝突防止ツールであり、航行の可視性を高め、船舶間の無線通信をより効率的にします。例えば、次のような音声通信を考えてみましょう。
「オランダのトロール船、エヴァ・マリア号、衝突防止のため右転することを確認」
このメッセージでは、AISのおかげで標的船舶の船名と国籍が判明しています。以前は、船員はより間接的な表現を使う必要がありました。
「ハンストホルムの北12マイルを東航行中のトロール船、衝突防止のため右転することを確認」
船会社はAISデータを利用することで自社各船の正確な位置を地上で把握できるようになりました。また、誰もが近隣沿岸域の船舶状況を確認できる公共情報システムも登場しました。
国際海事機関(IMO)は、海上の船舶航行安全について規制を行う国連の機関です。IMOは、GMDSS(世界海上遭難安全システム)に基づて SOLAS(海上人命安全)条約を制定し、業界および海事当局が使用すべき通信インフラを規定しています。右図は、GMDSSの主な通信システムとそのカバーエリア(A1~A4)を示しています。
AISはGMDSSの不可欠な要素です。AISトランシーバーには、送信出力と情報レベルの異なるクラスAとクラスBの2種類があります。クラスA端末は旅客船および総トン数300トンを超えるすべての船舶が必ず装備するよう、SOLAS条約の中で定められています。
右図の上部には、AISベースのSART(捜索救助トランスポンダー)システムがあります。これは、救助活動を効率的に行うために、近隣の船舶のECDISに落水者を直接表示するために使われます。
AISには、短いテキストだけのメッセージを送信するため送信機能も定義されています。これを ASM(アプリケーション・メッセージ)と呼びます。運河の水位情報、地方自治体による気象情報など ASM で発信されます。ASM は2001年にAISに追加され、2010年には IMO航行安全回覧289 (Circ.289) によってその使用方法が標準化されました。ASMは広く普及していますが、それによって、多くAISシステムの負荷が増加しています。
AIS や GMDSS(世界海上遭難安全システム)のようなシステムを使って、航海の効率化と航行安全が行われているものの、依然として海上での死亡事故は多発しています。さらに、北極圏を航行する船舶の増加や自律航行船の出現により、新たなシステムとデジタルサービスが求められています。海事当局と海事業界は、IMOの e-Navigation 構想において、これらの要求を包括的に捉えています。
e-Navigation は現行のGMDSSでは実現できないため、新たにVDES規格が策定されました。VDESは「AIS拡張版」とも言えるもので、船舶において大容量かつ広域の双方向データ通信を実現します。安定した衛星アップリンクおよびダウンリンクチャネルや、高度な変調方式を用いた新しいデータチャネルが定義されています。地上VDES(船舶間および船舶ー海岸局間)はVDE-TER、衛星ベースのVDES(船舶ー衛星間)はVDE-SATとして定義されています。
VDES により、以下に示すような新しい e-Navigation サービスが可能になります。
これらは衛星アップリンク・ダウンリンクを使ったサービス、船舶監視/追跡、船舶リモート制御のほんの一例に過ぎません。VDESを使うことで、さらに多くのソリューションやサービスが可能になります。
多くの e-Navigation サービスでは、準リアルタイム、あるいは定期的な(例えば1時間おきの)接続が世界規模で必要になります。そのため、VDE-SAT は非常に重要です。下図はマレーシア海域におけるGMDSSシステムの現在の利用可能状況を示していますが、この図からも広域接続の必要性がわかります。
VDESはVHF波を使うため、VDE-TERによるカバー範囲はA1エリアのみとなります。そのため、A2エリアとA3エリア(および北極圏のA4エリア)をカバーするには、VDE-SATが必要になります。
VDES は e-Navigation サービスの主な通信手段となり、今後 10 年以内に AIS に取って代わり、GMDSS システムに必須となる、と予想されます。
船上でのAISからVDESへのアップグレードはトランシーバー機器の交換だけで済みます。無線アンテナや電源、ECDISへの接続は変更する必要がありません。これにより、他のグローバル衛星ネットワークを使ったソリューションと比較して、大幅なコスト削減ができ、また柔軟に適用ができます。他の衛星ソリューションは高価な専用パラボラアンテナが必要で、例えばブロードバンドインターネット接続を5万隻の船舶にに提供する場合には適しています。しかし、世界各地の漁船やプレジャーボートにとっては選択肢とはなりません。また、新しいスマートブイソリューションには低コストの機器と接続性が必要になります。
VDESにおいて、もう一つの非常に重要なことはECDISなどの船内機器に直接接続できることです。VDESは船員や海事当局が認証したサービスのみを使えるようにする安全なシステムです。オープンなインターネットベースの通信を船内機器に直接接続することはありません。衛星ブロードバンドシステムを使用する場合、ハッカーの侵入やマルウェア導入のリスクが高まるため、サイバーセキュリティをさらに強化する必要があります。
現在、20万隻以上の船舶が「クラスA」または「クラスB」のAISトランシーバーを使用して自船の位置を報告しています。VDESによって実現される新しいe-Navigationサービス、ソリューション、システムでは、今後10年間で50万隻以上の船舶とブイがVDESを介して接続されると予測されています。この成長は、発展途上国におけるAISとVDESの普及によっても促進されるでしょう。
VDESを使うことで、沿岸行政と産業界の要求を実現し、海事分野のデジタル化を促進することが期待されます。これにより、世界中の近隣の船舶、海事当局、ブイ、サービスプロバイダー間で、地域に密着し、認証された安全なデータ交換が可能になります。
VDESは、海事安全/航行のための特別なIoT規格とも捉えることができます。VDESの成長率は、LoRa、Sigfox、NB-IoTなどの地上IoTシステムの成長率に匹敵すると予想されます。したがって、海事当局、海運会社、ソリューション/サービス プロバイダーは、VDES の実装に向けて今から準備することが重要です。
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